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三国同盟に反対した方 仲條拓躬

2025/06/19 (Thu) 07:28:19


三国同盟には、反対論がありました。その中で代表的なのは、海軍の吉田善吾。この方は非常にシャープな方で、三国同盟に反対しています。理由は、ドイツに戦争へと引き込まれるということです。

有名な当時、連合艦隊司令長官だった山本五十六も反対の急先鋒でした。ただ、吉田善五は激務で体を悪くして、倒れ入院ということになってしまったのです。山本五十六は連合艦隊司令長官でしたが、連合艦隊司令長官というのは、こういう政策に直接責任を持つ立場ではありません。結局、三国同盟を海軍側がのむことになります。

それから吉田茂。昭和15年(1940)の秋、吉田茂は実に的確な情勢判断を残しています。近衛文麿あてに、長い手紙で次のような内容の反対論を展開しているわけです。最初だけ紹介します。

「謹啓、政務多端日夜ご心労の段、拝察し奉り候。さて、小生承知いたし候ところにては、世間いわゆる国家新体制についてすこぶる了解いたしがたしと考えうる者多く、外交転換も大使召還をもって壮挙とするよりは暴挙となし、その後、後任者の名を聞きて、ますますその感を深くし、外務省内には不安の空気に満ち、外交機能停止状態とのことにこれあり。日独軍事協定の内容は存ぜず候ども、ドイツの勝利を予想してのこととなれば、その特使特派の事実こそ、彼自身、勝敗に確信動揺の証左と見るべき」

吉田茂は、ドイツから特使が来ているということは向こうが急いでいるのだ、それは1つの弱点なのだということをいかにも外交官らしく書面で指摘しています。義父が牧野伸顕ですから、牧野伸顕にも近衛文麿に出したのと同じような趣旨で次のような書簡を出したのが残っています。

「拝啓、日独軍事協約は、なおいまだ決定に至らざるよしに候ども、仏印問題急に悪化の模様にて心いたされ候。首相(近衛)も最早進退を考えられるべきときと存じ、別紙一紙を差し出し候。」

これは手紙文ですけれど、首相も最早進退を考えるべきと存じ候と言うのですから、近衛首相にもうおやめになった方がいいということを直言いたしましたから、どうぞよろしくと言って、自分の義父である牧野伸顕に手紙を出しているのです。吉田茂が、非常に強い信念で動いていることがわかります。

この首相に対するおやめになったらよろしいという話と似たような話があります。それは、昭和18年(1943)に戦局が悪くなって、東条首相が藁にでもすがりたい気持ちになってわざわざ山形にこもっている石原莞爾を東京に招請したときのことです。

東京の市ヶ谷の大本営で東条英機が会ったときの最初の言葉が「どうしたらいいだろう」と言うわけです。そのときの返事がまことに石原莞爾らしいのです。「あなたがおやめになるのが一番よろしい」と言ったという記録が残っています。

同じようなことを吉田茂もやっているわけです。これが三国同盟に対する反応として一番大きいというか、歴史的におもしろいところです。

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