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2034年「米中核戦争」勃発 - 仲條拓躬
2024/12/26 (Thu) 19:05:28
元NATO軍最高司令官のジェイムズ・スタヴリディスが、米中戦争を描いた小説『2034:次なる世界大戦』が反響を呼んでいます。同作は米海兵隊出身の作家エリオット・アッカーマンとの共著で2021年3月に出版され、アメリカと中国が核戦争へと突入していく様子が描かれているのです。
2034年「米中核戦争」勃発の現実味について、スタヴリディスに米メディア「ノエマ」が聞いています。『2034』は今から10年後の未来を舞台にしていますね。中心となるプロットでは、中国が米艦隊のデジタル制御システムを無力化して沈め、台湾を制圧してしまいます。
中国の優位性は、自国艦隊の動きを隠しながら、衛星やインターネット通信を遮断する能力にあると描かれています。あと何年ぐらいで、米中のサイバー軍事力にこれだけの差がついてしまうのでしょうか。
スタヴリディス 軍事的な攻撃を目的とするサイバー技術、AI、マシンラーニング、量子計算の領域においては、今のところアメリカが中国よりわずかに優っています。しかし、その差は急激に縮まっており、それはたとえば、元グーグルCEOのエリック・シュミットが委員長を務める「AIに関する国家安全保障委員会」の報告書でも指摘されています。
10年後、つまり『2034』の時代設定の頃には、こうした技術領域のすべてにおいて、中国がアメリカを追い抜く可能性がきわめて高いと私は考えています。まだ流れを変える時間は残されていますが、関係領域の趨勢を見る限り、アメリカにとって有利な状況であるとは言えません。
中国に後れを取らないようにする、あるいは追い越していくには何が必要なのでしょう?スタヴリディス 科学、技術、工学、数学、つまりSTEM教育課程の各段階に対し、財源の投資を強化していくべきでしょうね。
この領域で最も優れた学生たちを選び出し、その才能を伸ばす。国内トップレベルの大学におけるコンピュータサイエンス、AI、量子計算分野で、新たな修士プログラムを創設する。さらに、こうした領域の基礎研究や開発に対する財政支援を増やすことも大事です。
民間セクターでは、米国防当局との協力にインセンティブ(報奨)を与えたり、日英仏独などのSTEM分野に強い同盟国との連携を促したりすることが重要でしょう。また、これらとは別に、核兵器使用に結びつくサイバー技術の抑止体制を構築していかねばなりません。
中国は2034年を待たずに動くかもしれません。軍事戦略家のなかには、米中の現在の軍事力を比べても中国が優っており、仮にいま戦争が起きたとすれば、アメリカとその同盟国は台湾を防衛できないと予測する人もいます。この評価は正しいでしょうか?
スタヴリディス そうですね、ワーテルローの戦いについてのウェリントン公爵の言葉を借りれば、「これまでにない接戦」になるでしょう。個人的にはまだアメリカは勝てると考えていますが、かなりの激戦になり、双方で多くの血が流れるでしょう。
そのような破滅的な結果を免れる方法を見つけなければなりません。『2034』を書いた理由の一つは、 1914年にヨーロッパ諸国がいつのまにか第一次世界大戦に突入してしまっていたように、戦争へとなだれ込んでしまう事態を回避できるよう、警鐘を鳴らしておきたかったのです。